こだわり

「再生」とは、家の歴史のなかに〝今〞という時代性を入れ込むこと。

 

現代建築の実務を積んだ後、古民家物件を多く扱う設計事務所で再生技術を習得。
伝統的日本建築の美観と実用性、そして現代的な性能を備えた住宅は「100年後の古民家」を目指している。

 

21歳のとき学校を出てはじめて店舗施工会社に就職しました。
その頃手掛けていたほとんどの物件では、内装にベニヤやペンキなどの新建材や壁紙と、安価で手軽に仕上げることができる材料を使っていました。
当時はそれがごく一般的だったのですが、だんだんと人が心地よいと思える空間とは違うのではないかと思いはじめ、脱サラし、地元である千葉県の建築会社のお手伝いをしました。
規模は小さいものの丁寧に家づくりをしている会社で、古材の扱いや何百年も前の古民家の再生という仕事にも出会いました。
熊家民家再生という屋号で設計事務所として独立したのが25歳のときでした。
 

暮らしていて気持ちよいと思える道具の一部であってほしい。

民家は人が住み、生活する所。暮らしていて気持ちよいと思える道具の一部であってほしい。
もちろん美しい空間であることは大切ですから、昔の日本の家がそうだったように機能美を求めていけばいい。
独立してから年が経ちますが、今でもその大元の考えは変わっていないと思います。
 

移築再生は決して高くない

新築の費用と違うのは物件代と解体、運搬費の3つだけですよって。
古い物件は無料譲渡される場合も多いですし、解体、運搬費はだいたい200〜300万円ほど。新材購入費用との相殺と考えれば大きな出費ではないはずです。
施工期間も新築より3ヵ月ほどプラスに考えておいていただければ完成します。
以前あるお客さんから、「別の工務店さんで予算が合わなかったんだけれどあきらめきれない。どうにか移築できないか」というご相談を受けたことがあります。
お客さんが持参してこられた見積書を見ると、施工費の概要は適正なのですが、仮組み費用や各工事の施工費といった手間賃が大幅に高く見積もられていました。
これは決して不適正な価格ではなく、要は、再生の経験値が少ない分、金額を多くみておかないとわからないということなんですね。
 

コストダウンというのは小さなことの積み重ね

熊家民家再生では、計画から設計、設計監理、施工管理までを私が一貫して行っているので、これまでの経験とあわせて全体を俯瞰しながら、細かく段取りを組んで施工無駄をなくし、ギリギリまでコストを抑えることができます。
通常、設計事務所に依頼して住宅を建てる場合、設計料と設計監理料が、工務店側には現場管理料が発生し、それぞれと契約して支払いをする必要がありますが、私のところでは、設計、施工を併せて一括で契約していただき、双方あわせてコストコントロールしていきます。
たとえば、うちでよく手掛ける既製キッチン+オリジナル天板は、私が天板の図面を描いて発注をかけ、現場に届けて一般の大工さんに取り付けてもらいます。
これら一連の作業にしても、別々に予算をとらずに済むので、全体の金の無垢にすれば、素材感があり、長く愛用したいと思える仕上がりになります。
 

図面は温もりのある手書きにこだわります

最近、設計士の知り合いからやっとCADを使いはじめたということを聞きました。
一時期、誰もがCADへ移行していましたが、なぜここへきてわざわざと尋ねてみると、どうやら老眼になったらしいんです。
図面を手描きするのが辛くなってきたが、CADは瞬時に拡大縮小できるので見やすくていいと。
なるほどそれは必要だ、と思いました(笑)。私もずっと図面は手描きできましたが、CADも頭の片すみに……。でも、まだまだ温もりのある手書きにこだわります。
 

「お客さんに親しんでもらえるつくり手であることが目標です」

日々、暮らしていくなかで気持ちよいと感じられる家がやはりいちばんではないでしょうか。
もちろんつくるのは職人さんですから、職人さんがいなければ家は建たないんだよということを伝え、同等の関係を築きながら共同作業をしていきます。

三者が現場に揃えばさまざまな事柄が即決でき、工事がスムーズに進む場合が多いです。
以前、現地再生した房総の古民家も、細い材を巧みに組み合わせた構造がとても見事でした。
どんな古民家にも一棟一棟違った魅力があるものです。少しでも古民家に興味がある方は、どんなに小さなことでもかまいませんのでぜひご相談いただければと思います。
いつもお客さんに親しんでもらえるようなつくり手であることが私の目標です。
家が完成したときには愛着をもって使っていただき、100年後にも古民家として残ってくれればこんなにうれしいことないですね。

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熊家民家再生/岩隈 宏